周りで様子を見ていた人々と黒根社長は
「なーんだ」と言って散って行く。
女は、

「え、あ、これは失礼いたしました」

と謝ったが、

「すると、あなたのイトコはどこにいる
 のでしょうか?」

とも聞いてきた。

ネコ専務のイトコは、顔かたちはネコ
専務とよく似ているのだが、どうしよう
もない遊び人で、本物のヤクザではない
が「ネコヤクザ」と呼ばれていたネコで
ある。

「ああ、彼なら10年ほど前、「南米で
 石油を掘り当てるんだ!」と言って
 南米に行ってしまいました。
 私はそれから会っていないので、どう
 なったのかは知りません」

「そんなあ・・」

女はロビーの床に座り込んでしまった。
男の子猫は、困ったように母猫とネコ
専務を交互に見ている。

2人が気の毒になってきたネコ専務は、

「分かりました、私は彼の行方を調べ
 ますので、今日のところはお引き取り
 下さい」

となだめて、2人を帰らせ、親類に連絡
して、ネコヤクザの行方を聞いて回った
のであった。