ネコ画伯の子供の一人に、大根(おおね)
ちゃんという、かわいらしい女の子が
いる。

この名前の由来は、ネコ画伯が絵を描く
ときにいつもタクワンをポリポリかじり
ながら描く、というところから来ている
のだが、大根ちゃん本人は自分の名前が
あまり気に入っておらず、特に、

「私は女優には絶対なりたくないよ。
 大根役者って言われてからかわれる
 から」

と言っているのだった。


しかしそういうものほど、かえって意識
してしまうものである。

大根ちゃんは叔母の小宮ねねの主演した
映画「四国沈没」が大好きであったし、
中学2年生のときにクラスで劇を発表
したときに、ガマガエルのお姫様の役を
演じて、非常に楽しかったこともあって、
いつしか、自分も女優になってみたいな
と思うようになってしまった。

それから彼女の苦悩の日々が始まった。
大根ちゃんは来年高校受験だが、女優に
なろうと思うなら、高校大学と演劇を
勉強した方がいいに決まっている。
しかし、

(もし大根って名前の女優がいたら、
 だれだって「大根役者」って呼んで
 からかうに決まってる!)

と思うと、なかなか自分の進路を女優
にする決心がつかない。