……これは、俗に言う「ムゲンジゴク」。


 ハマったら最後、延々、エンエン、同じところを走り回らされ、最後はスタミナを全部吸い取られてお陀仏だ。


 悪寒がし、三人は寝袋を出し、しばらくの間、目を開けたまま緊張していた。


「こんなにきれいな星空なのになあ」


 東雲が呟くと、堀田が、


「言いたくはないが、これは誰が見ても聞いても、化かされてるぞ。一人でどこかへ行くなよ」


「じゃ、手をつなごう」


 目新しくはないが、その場に合わせた仕切り屋の東雲。


 そういう彼は、ごくごくナチュラルに手を握った。


 ところが、彼の位置からすると、一番左にいた彼の左側には誰も寝ていないはずなのに、柔らかい手が左手を握っていた。


 これが離すのが惜しい気持ちの良さ。


 きっとアレだな……ウェールズ辺りでグッドピープルとか言われてるひと達のひとりだな。


 彼は思って、気づかないふりをして、そのまま寝た。


(ふにふにとしてやわらかくて、気持よかった……)


 クールな堀田はすかさず、


「虫に刺されるぞ。唯一の火種は置いてきちまったしな」


 そのとき、三人はゲームの中のようなウィルオーウィスプを見たと思った。


 いや、普通に鬼火とかいうべきものだった。


 ぞっとして身動きできなくなっていると、人一倍努力がしつこい堀田の奴が、虫よけスプレー缶を空にした。


 かわいそうな虫。


 堀田はカリカリと後頭部を掻いて、欠伸をかみ殺しながら言った。


「起きて見回せばススキ野原かい。土手中、柔らかそうなススキの穂。ま、けが人がなくて良かったな」


「んだんだ」


 相づちをうったのは、いちいち尻馬にでも乗っかってくる鏑木だ。


「んで、今日はどうすんだ」