ともあれ、金はあっても使う便利な店がない。


 コンビニとか、ATMとか。


 ヨシイクゾーが「おら、こんな村いやだー」と歌い始めたころのことである。


 嘘である。


 ここは現代日本である。


 ドのつく田舎に慣れてない、現住所がそこそこ田舎の三人は腑に落ちない顔つきをして帰りの道についた。


 そろって花粉症になりながら。


 彼らはふしぎとくしゃみが止まらない理由をいついつまでも覚えているのだろう。


 彼らももう懲りて、遠征から普通の道路を通って戻ってきた。


 そしてすぐ、鏑木 功の一番年の近い兄に、バンで迎えに来てくれるように連絡を入れようとした。


 かろうじて通じた携帯の電話口で、鏑木 兄の大笑いが聞こえてきた。


「ほうらみろ、だから嫌だったんだ。兄貴に借りをつくるのは」


『なに? 三人で化かされたって? ウシシッ。そのネタ、じっくり聞かせてもらおうじゃないか』


 鏑木 弟がむくれた調子で、携帯の音量を下げる。


「笑いごっちゃねーぞ、ひでえ目にあった」


 弟にはわかっていた。


 電話口で絶対!


 盛大に兄がニタついているのを。


 それは確信と言ってもいい。


 弟は兄の馬鹿笑いが収まるのを待ちながら、携帯をパッと耳から離し、


「兄貴、こういうのに目がねえの。そんかわし、ネタを提供すれば親父たちにはなんとかとりなしてもらえる……はずだ」