一瞬だけ…彼の素顔を見た。


端正な顔立ちに黒真珠ような瞳。


彼は私が拾った眼鏡を奪い返して、何も言わず…立ち上がる。


「怪我…ない?」


「…ああ~」


甘く少し低い声。


「……」


そのまま私たちはすれ違った。