「いいよ。落ち着くまで、こうしててあげる…」

俺の背に手を回して、優しく撫でてくれた。

するとさっきまで感じていた不安がすっと消えていく。

「…ありがとう…」

ぎゅっ

腕に入る力がほんの少し強くなった。

「大丈夫、大丈夫だから…」

香絵はそう繰り返し呟いていた。

…心の底から湧き上がってくる、“好き”という気持ち――

自分で決めたはずなのに、堪えきれない。

もう――

「…香絵、俺は――…」

俺が気持ちを伝えようとしたそのとき、

バンッ!

「姉ちゃん、圭太! 晩ご飯出来……」

「「「…………」」」

三人は同時に絶句した。

それもそのはず、俺と香絵が抱き合っていたら普通にびっくりするよな。

「っごめん! 俺邪魔しちゃった!?」

何を勘違いしたか、優は顔を真っ赤にして部屋から出て行った。

「ちょ、優! 違うから!!」

香絵が慌てて優に向かって叫ぶ。

……俺は今、何を言おうとした?

もし優がこなかったら……

さっきから固まっている俺に、ドアのところにいた香絵が振り返って言った。

「どうしたの? ご飯出来たって。 行こう」

にっこりと微笑んで手を差し伸べる。

「あ、あぁ…わるい」

その手を取ってようやく俺は立ち上がった。




その後、居間に入った途端優やおばさんから質問攻めになったことは言うまでもない、よな?