「どうしたんだよ! 何だよこれ…何で泣いてるんだよ!!」

どうやら香絵には俺の声は聞こえていないらしい。

『圭太がいない…どこ? あたしを置いていかないで……』

「香絵、俺はここにいる! お前の傍にいるよ!!」

やはりこの声は届かないのか…?

透けていた香絵のからだは更に薄くなり、気づいたら――

「……っく……なんでだよ……」

消えていた。

「なんで届かないんだよ! クソッ!!」

俺は思いっきり拳で地面を殴った。

「香絵――――!!!」




「圭太! しっかりして!!」

!!!

……ここは……?

「大丈夫? だいぶうなされてたみたいだけど…」

心配そうに俺の顔を覗き込む香絵がいた。

うなされてた? ってことはアレは夢か…?

「良かった…」

「え?」

俺はゆっくりと体を起こした。

服が嫌な汗でべっとりと張り付いて気持ちが悪い。

「本当に大丈夫? 嫌な夢みたの…?」

そう言いながらその白い手で俺の頬を触る。

あぁ…香絵はここにいる――

「…ッ…圭太!?」

我慢出来なくなって、存在を確かめるように俺は細いからだを抱き寄せていた。

「…ごめん……今だけ、こうさせて……」

その声は僅かに震えていた。

涙が出そうになったが、なんとかそれは堪えた。

こんなことして、香絵はどう思うかな。

嫌な顔でもしているんだろうか。

そう思うと怖くて顔を上げることが出来ない。

けど、そんな心配は無意味だったみたいだ。