「っもう! なんで東京はこんなに人が多いのよ!?」

生まれてこのかた、田舎町からほとんど出たことがなかったわたしは、イライラしながら駅を出る。

まったく、こういう時のために少しは都会に出てこないとだめね!

と、いまさらながらちょっと後悔してみたり…。

えっと~どこだっけ?

わたしは小さく折りたたまれたメモ用紙を取り出した。

そこには小さく住所が走り書きされていた。

ってゆうかさ!

なんであいつは迎えに来ないのよ!

あいつ、今日は一日中オフだって言ってたじゃない。

売れっ子の歌手様はそんなに疲れてるんかい!!

…………

はぁぁぁぁ…なんか文句ばっかり言ってるなぁ。

確かに、本当はあいつはわたしに来て欲しくなかったみたいだし。

それをわたしが無理やり行くって言ったわけだし。

でもでも! せめて出迎えのひとつくらいあってもいいと思わない?

……せっかくの3年ぶりの再会なのに。

そう。 あれからもう3年が経った。

わたしたちは去年成人式を迎え、一人前の大人になった。

まぁあいつは忙しくて式には来なかったけどね!

そんなわけで今はもう21歳となっていた。

わたしはタクシーを捕まえて目的の場所へ辿り着いた。

そこは結構立派なマンションで、ここにやつは悠々と一人で住んでいる。

少々ムッとしながら、エレベーターで12階まで上がり、メモの番号の部屋の前で止まった。

「はぁ~…」

大きく深呼吸する。

「っよし!」

意を決してインターホンを押した。

あれ?

確かに押して、鳴っている音も聞こえたのだが、なんの反応も無かった。

もう一度押してみる。

が、やはりあいつは出てこない。

え~い! こうなったらぁ!!

「今すぐ開けないとお前の恥ずかしい秘密をここで叫ぶぞー!!!」