「あなたは、私を憎むかしら?」

昔の僕なら、憎んでいたかもしれない。

でも、どうしてだろう……イッチーを、憎むことができない。

「……私は、こうしなければならない運命なの。どれだけ苦しくても、悲しくても。皆が笑って、悲しまない世界を、ヒトは理想として掲げる。でも、それは不可能なことなのよ」

「……世界のバランスを保つために必要だから?」

「……えぇ」

少し悲しそうにうつむいて、イッチーはそう言った。

「あなたには分かってほしかったの。許してくれとは、言わないわ」

なんて卑怯な神様なんだ。

僕が恨めないことを、知ってるみたいに。

「僕は、恨まないよ。でも、イッチーには1つ、お詫びをしてもらおうかな」

「お詫び?……それで済むなら、いいわ」

神様、僕の望みは1つだけです。

「イッチーが、ずっと人間界にいてくれたら」

それだけで僕は、報われる気がするんだ。

「……分かったわ。それであなたの、心の傷を癒せるなら」