「じゃあ、イッチーはそのスケジュール帳で何を書いてるの?」

「私が書いてるのは、大まかな時代の流れよ。誰がどうするかは、私にも予想できない」

じゃあ、僕の家族はたまたま殺された?

「どうして、殺したんだ……?」

いつもの何倍も真面目な顔で、イッチーは答えた。

「世界のバランスを保つためよ」

「どうして!どうして僕の家族が犠牲にならなくちゃならなかったんだ!ほかの誰かが殺されていれば、僕の家族は!」

周りの人の視線を感じる。

でも、そんなこと関係なかった。

「ニノミン、落ち着いて。……今日は、学校をサボりましょうか」

……どうして?

どうして、そんな憐れんだ瞳で僕を見るんだよ。

「公園に行きましょう。あそこなら、今はあまり人がいないはずだし」

誰かがそう言った気がする。

もう、僕の隣にいる誰かが、神様なのか悪魔なのか、分からなかった。

そして、悔しい。

どうして僕は、あのとき家族と一緒に死ねなかったんだろう。

どうして僕は、イッチーが指定した人数の中に入れていなかったんだろう。