学校なんて行きたくないのが本音だけど、父さんと母さんが頑張って働いて授業料を払ってくれてるんだ、僕も恩返しのために行かなくちゃ。


その日の授業の1時間目は確か、僕の大嫌いな理科。

いや、嫌いになるのはもう少し先かな。

とにかく、先生の書いた文章を何も考えずに丸写ししていたら、校長先生が慌てて入ってきた。

「二ノ宮くん、ご両親が――」


これが、僕の過去。

消してしまいたい、記憶。

警察の話によると、父さんも母さんも、お互いがお互いを刺し殺したらしい。

弟は、首から上だけが押し入れから見つかったとか。

眠ってるような顔だった……と思う。

もうその記憶は定かじゃない。

でも、1つだけ確かな記憶は、僕が美味しく弟を食べたこと。

これは事実であって、もがいてももがいても、消せない。


この日から僕は、理科と肉と非日常が嫌いになった。

理科の範囲はそのとき、ちょうど『ヒトのしくみ』ってのをやってたんだよね。