僕は実感した。
イッチーを敵にまわしてはいけないと。
「……本当、書いてある」
「これで持ち主も分かったでしょう?さ、返しなさい」
「だ、駄目よ……。これを渡したら、私……」
巨人が泣いてる。
その涙は頬をつたってあごまで来てそして……落ちてきた。
塩辛い透明な水で体をおおわれる僕。
それを見て笑うイッチー。
……このアマ。
「それより、どうして私にそのスケジュール帳を返せないのかしら?」
「……本当は、拾ったんじゃなくて、もらったの。そのとき、そいつは言ってた。これを、持ち主に返しちゃ駄目だって。もし返したら……ヒッ!」
しゃっくりでも出たのかな。
それにしては、顔面が般若みたいになってるけど。
「ニノミン、あれがボスみたいね。……どう?ドラクヘっぽいでしょう?」
「あー、うん」
今さらだけど、この子、めんどくさい。

