それに、イマドキ色じかけだなんて絶対にキモい。キモいどころか引かれてしまう。話すら聞いてもらえない…!マイナスなイメージしか、浮かんでこない。

「てか、水泳部なんて、超色じかけじゃん?」
『それ……嫌味?可耶も水泳部でしょ?』
「だって、好きな人居ないもーん♪」

あぁ、お気楽な可耶め!今すぐにでも、心のモヤモヤを渡してやりたい!

「何してんの?佐々木に岡田 深刻そぉじゃね?」

声を掛けて来たのは、あたしのクラスの三越英太。あたしの友達 林田舞の彼氏。………そんで、水沢潤の親友。水沢の親友のこいつなら、少しは参考になるかもッ!

『三越!ナイス!』
「ね!ね!色じかけで、男って落とせるよね?」「………は?」

三越が、唖然とした顔で見つめていた。質問が、質問すぎるよね…。でも、もし三越が“舞の色じかけで落ちた”って言ったらどうしよう……!
舞って大人っぽくて、た~まに見せる八重歯が可愛いから……。その、八重歯が色っぽいのかな?!それなら、三越が落ちるのも頷ける!

「うーんとね?舞の色っぽい首筋と、胸かな?」「胸ぇぇ?!何、おまえエッロ~!」
『……ちょっとごめん。半径10Mは離れて?』「マジかよ!?」

……やっぱ男の子は…い、色じかけなのかなぁ?そ…れに胸は…。あたし…は無いからなぁ……。へ、凹むなぁ…。

「私がいつ、首筋と胸で落としたんだよっ!」

バチンッ!!と鈍い音が三越の頭から鳴り響く。鳴らした主は……三越の彼女の…

「げっ!舞!」

舞は、颯爽を現れるや三越の胸ぐらを掴んで

「いつから、私は胸で落としたのか言ってみな?」

とヤクザ混じりな脅しを始めた。敵わないと感じたのか、すぐに謝り出した。

「……嘘です。ごめんなさい、ごめんなさい!許して下さいッ!」
「妃泉に、教科書借りようと思って来たのに…!許さないから」

あたしの目の前で繰り広げられる舞と三越の口喧嘩。ケンカでも、やっぱりカレカノって、羨ましいよぉ……。舞も“許さない”って口で言っても、口元が緩んでるし。

「もう、知らん!」

でも、とうとう舞が折れた。三越は、しどろもどろに舞の名前を呼んだ。舞は呆れ顔で振り向いた。

「なによ?」
「ちょっと、横向いて」「もう…な…?」