水嫌いマーメイド

「説教お疲れさま、佐々木」


『……水沢』


「…佐々木にあれだけ注意したのに聞こえて無かったみたいだな」



『………あ!』



あああ!!
やっちまったぁぁぁぁ!



あれだけ、心に言い聞かせてたのに…。



あっ…あたしのバカヤローー!!


洸仙の女子に続いて、今度は自分自身を説教していた。あの時は、完全にぶちギレていて、自分の理性が吹っ飛んでいた。


水沢が、あたしに近付いてきて小さく耳元で、


「あとさ…ドーピングはDNA鑑定じゃなくて、血液検査とかだよ」


と囁いた。
け……っ、血液検査!?


『ふぇっ?!』


びっくりで、拍子抜けの声が出てきた。


「そこまで考えなかっただろ」


そっ…そういえばDNAは、遺伝子的なものだった…け…?

ふっと笑った顔は、無邪気な少年のような顔だった。こんな時に気が緩み過ぎたけど…水沢って、やっぱりカッコいい……。


「タオル足りてる?妃泉……?ちょっ…妃泉?!」


「おっ、おい!?佐々木?!」



ヤバ……水沢と可耶が来てくれて…安心して……気が…抜けすぎたかも…。

可耶がぼんやり遠くなってきた。

好きな人の前では、…ちょっと“おバカ”が良いって……雑誌に書いてあったけど…あたし…おバカ通り越して……ただのバカだった気が……。


目の前が、だんだんと薄暗くなって視野も狭まっていき、小さな視野の中で、水沢と可耶があたしの顔を覗き込んでいた。

……この調子なら、老後のお葬式は悲しくならなくて済むかも…。





「あ…妃泉気付いた?!?!分かる?ここ、控え室だよ!」


『……可…耶…?』


真っ白…までは、いかないけど白とベージュの間ぐらいの色の天井、あたしを覗き込む可耶の顔。

今、あたしがソファに横たわっている事が、認識出来た。


「良かったぁ~。心配したんだよ~?このまま死んじゃ…」


『可耶……人は簡単に死ねない生き物なの。縁起悪い事言わないで』


可耶の口をつまみながら、心配されてる身とは思えない警告をした。