あたしの少し前を歩いて、まるで案内してくれてるような水沢。

あぁ……超紳士的!
歩く速さも適宜で、決して速すぎなくて…。
水沢に見とれてる間に会場に着いてしまって、一気にテンションがガタ落ちしてしまった。


「如月高校マネージャーです」
「如月高校さんはゴール側に、お着替えは一番でお願いします」
『ありがとーございます』

室内の会場だから、受付に手続きを済ませる。

『あたし達…初めてだから、何処か分かんないんじゃあ……』
「大丈夫、俺がメール打っとくから」
『ありがとう~♪』

ホント最高に助かる。
こんな完璧イケメンに、アイドル並の笑顔じゃ…誰だってイチコロだよ。

水沢がメールを打ってる間にトイレに行って、メールを確認した。

『可耶ぁ?』

【やっほぉ♪妃泉チャン、水沢クンとはどぉかな?そろそろ着くから、ゴメンねっ☆】

なんだこのノリの軽さは…?
“どぉかな?”って満員電車のキスを可耶は、期待してるのかな?

しかも、ラストの“ゴメンね”って何かしたの?


「佐々木ー!」

ヤバッ!水沢が呼んでる!とりあえず、シューはして出よっ!!

『ごめん…お、お手洗いに行ってて…』

いつも、“トイレ”としか言わないのに、よく“お手洗い”なんて難しい単語が出できたなぁ…。

恋する力は、人を急激に天才にするって、つくづく実感。

「とりあえず、ゴール前の場所なら分かるし、行っとこうか」
『うんっ』

1年の立場上、場所取りはしたっぱの役目。
そんな役でも水沢と2人ならあたし、めちゃくちゃ頑張る!!

それに、可耶達みたいにずっと応援じゃないから至近距離で水沢を見てられるのは、ものすごい幸せ。


まだ、ちらほらとしか居ない観客席に、とりあえず何の意味も無く2人共座った。


可耶まだかなぁ…??


「すみませぇ~ん!!」
「ちょっと良いですかァ~?」

びっくりするほどの、甘ったるい声がスタンドから、2つも聞こえてきた。

「どうかしましたか?」
「何校の人ですかぁ~?」

あぁ……逆ナンか。
こんな朝っぱらに…しかも、水泳の大会という健康的なこの日になんて、不健康なんだろ。