「妃泉は、中学の頃コクられたの?」
『全然!逆に、コクりまくりで、断られてばっか』
「佐々木カワイーのにィ~」
『ちょっ、舞!あたしは、三越取らないから睨まないで!』
「そうそう、俺が愛してんのは舞だけ♪」

三越のラブコールは舞には重すぎたらしく、真っ赤になっていた。

小さく押し潰されたような声で、“やっぱ、あげる”と聞こえたのは幻聴って事で。

「……さっきの妃泉の意見に賛成する」
『女子だけ悩んでる…ってコト?』
「…うん。だって……」

そっか…やっぱり舞にもそんな風に思うんだ…!

「だって……?」

女の子みたいに、テーブルに両ひじをついて、“うんうん”と首を振る、三越。

『はい、そこ黙れー!』

せっかくの空気が台無しだ!!お調子者キャラも大概が良いんだ!

「黙れー!はナイっしょ?」
「…………帰れ」

愛すべき彼女 舞からのとどめの一撃。
ゴングは鳴った、敗者は屍に一歩近づいた三越英太。

「…俺マジで帰ります……」
『…マジですかぁ…』
「……五月蝿いのが減って清々する」

最後に涙声混じりに、行儀が良すぎるほど

「此度は、このような場所にお招き頂き、有難うございました…」

と、深々と頭を下げて帰って行った。

『舞……あそこまで言わなくても…』
「……愛情…表現って分かってるのに…」
『分かってるのに?』
「何で、人前であんな恥ずかしいセリフが言えるのか……分からない…」

あぁ、そっか。

舞は超オクテで、好きなのに、“好き”の2文字が言えないのに、積極的で、素直に、好きな気持ちを伝えられる三越に惹かれたのかな?

フツーは、言い過ぎると「想われてない」って、言われがちだけど……

『舞って、やっぱりベタ惚れでしょ?三越に』
「えぇ?!」
『今ドキ流行りのツンデレか!』

それは、奥手な舞には、最高の愛の言葉なんだ。


ただ……


「わ、ったしがツンデレな訳が無いでしょ!?」

顔をまた、赤くしてあたしに訴えた。

奥手+ツンデレは、最高の好き要素でも有り、最高の…二重苦だと思う。

舞……そういう人を、世間ではツンデレと言うんだよ。