その後、あたしも水沢も無言のままで、ほんのちょっとだけ会話する程度で各々の家路に向かった。

“送ろうか?”って、折角、言ってくれた優しい気遣いも、振り払って走って帰った。

『なんで…あたし、そっけない事したんだろ…?』


今更、後悔した。

家に帰って、プールに入った訳でも無いのに、何かを流すようにお風呂に入った。


メールも送れなくて、もどかしい気持ちを眠気に変えて寝た。



『ねぇ…舞!どうしたら良い?!』
「どーしたらって…。まず、水沢の事が好きって事実にびっくりしたんだけど」
『真剣に考えてよぉ!』

あれから、数日経った日曜日。

部活は、あたしが一方的に気まずいって思ってるんだろうけど…気まずくて行ってない。

舞を家に呼び出して、心を落ち着かせようと思ったけど……。

『何がなんだかぁ…』
「妃泉…落ち着け」
『落ち着けるワケないでしょお?!』
「あーもう!!」

舞が吠えた。
びっくりして、思わず背筋が伸びた。ビクビクしながら舞を見ると目線はケータイに向けられていた。

『……三越?』
「え゛…」
『三越なんでしょ!まーい?』

次第に赤らめていくクール系女子代表 林田舞。

わぁ~、ギャップサイコー!ホントに奥手なんだぁ…。

「妃泉…今失礼な事考えてるでしょ」
『ブッブー!』
「考えてる!ぜーったい考えてる顔だから!」
『あ、三越なら呼んでいーよ?親居ないし』
「な、なんで…」

不意を突かれたような、舞のびっくり顔。
どうだ!あたしは占い師より当たるんだよ?(ただし、舞のみ)

「……良いの?」
『良いよ、だって…そこに居るし…』
「げっ!」

窓を指さした先には…三越がケータイを持って、あたしの部屋を見ていた。
舞が慌てて、窓を覗くと待ってました!と言わんばかりに三越は、全力で手を振っていた。

「ご近所迷惑だ!」

と舞が恥ずかし混じりに叫び出した。

流石に『あんたがな!』とは言えず、見た目より可愛くて、奥手な舞を見るのが楽しくって放置しといた。


「お邪魔します」
「ほーんと、邪魔!」
『まぁまぁ…』

ニコニコしてる三越を余所に少し機嫌悪くなった舞。こう見ると…ベストカップル賞だなぁ。