左手のエース

「歩いて帰れよ。

俺こっちだから」





リョウは顔で
あたしの家とは逆方向を示しながら、
そっけなく言った。


なかなか開かない自転車の鍵を
左手でカチャカチャといじっている。






あたしは鍵を開けようと
手を差し延べようとして、
また引っ込めた。










"余計なことすんじゃねぇよ"




さっきリョウが言っていた言葉が頭に浮かんだ。







リョウは、きっと
右腕が使えないことに

あたしが思っている以上に
負い目を感じている……









そんなことを思いながら
リョウの側にいると、

リョウは
鍵が開いた自転車にまたがりながら




「そういう気使いが

一番イライラすんだよ」



と言った。