「はるか、本当に浴衣着ないのかい?」

ばあちゃんがしつこく聞いてくる。


お祭り前夜、あたしはお母さんの実家であるばあちゃんちに居た。




『着ないよ。来年、自分の浴衣を着るよ…』

そう、高校を卒業して就職したら自分のお金で自分の好きな柄の浴衣を買うんだ。


お神楽のおっちゃんたちと同じ、おかめさんとひょっとこが描かれた浴衣は着れなくてもね。




「じゃあ、お神楽のは…?」

『ばあちゃん、去年着付けてくれるの大変だったでしょ?』

「そうだったけど…」


あたしは去年、男物の浴衣を着た。

元美容師のばあちゃん。
男物の浴衣を女の子に着付けたのは常識的に初めてで、かなり苦戦していた。




『とーにーかーく、大丈夫だよばあちゃん!』