「何企んでる……って。何も……」
「水月を好きなのか?」
あたしはぐっと言葉を呑み、口をつぐんだ。
今余計なこと言わないほうがいい。
こいつ、あたしの一枚も二枚も上手だ。
怖い……
「ふぅん。じゃあいいや」
保健医はにやりと笑うと、あたしに顔を近づけた。
あたしは思わず顔を背ける。
保健医はあたしの首元に顔を埋めると、あたしの首筋を舐めあげた。
突然のことに目を開いて、保健医を凝視した。
すぐ近くで保健医が勝ち誇ったように、ニヤリと笑う。
数秒遅れで、どうゆう状況にあるのか理解できた。
「何すんだよ!」
あたしはじたばたともがいた。
もがいたけど、掴まれてる腕はぴくりとも動かない。
保健医はくっくと低く笑うとあたしの太ももを掴んだ。
さほど力は入れてないように思えたけど、骨までも握りつぶされそうな圧迫感に目を開く。
その手がだんだん上に上がって、スカートの中にまで侵入してきた。
だけどいやらしさは欠片もなく、ただそこにあるのは怒りや疑心なんかの負の感情だ。
「やめて!あたし何も企んでないし、神代先生を好きでもない!」
あたしは叫んだ。
保健医の手が出し抜けに緩む。顔も首元から離れた。
「ふぅん」保健医はそう言って目を細め、唇をちょっと舐めた。
「ま、いいや。でも水月に何かしてみろ。今日のようには行かないからね?
これは忠告だ」
保健医があたしの上から退くと、何事もなかったかのように白衣の乱れを直す。
そのスマートな仕草が憎らしい。
あたしはベッドから飛び上がると、スカートを慌てて直した。



