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あたしは大人しく保健室に出向いた。
あたしが入るのを確認すると、保健医はドアに鍵をかけた。
一つしかない出入り口を閉ざされた。
嫌な予感がする。
それが何かの合図になったのか、保健医はあたしに近づいた。
あたしは目を細めて、保健医を見上げる。
保健医は、もうあのにこにこ笑顔を浮かべていなかった。
瞳の奥で何かが光って、口の端がつり上がる。
これがホントの姿か。
「書類は?」あたしは聞いてみた。
「んなもん、ねーよ」
口調まで変わってる。この似非保健医が。
やっぱりね。こいつは何か企んでるって思った。
でもこいつの企みにまんまと乗るわけにはいかない。
「じゃああたしは帰ります」
あたしはくるりと方向を変えた。
「待てよ」
保健医があたしの腕を掴んだ。



