楠 乃亜と明良は強く抱き合ったまま何も喋らなかった。 僕はそっと立ち上がると、彼らに黙ってその場を立ち去った。 人を…… 命がけで愛したことはなかった。 命を落としてまで、誰かの心に残ろうとは思わなかった。 僕は人としての感情が抜け落ちてるのだろうか。 それとも彼女たちの想いが強すぎたのだろうか。 分からない…… 風に乗ってふわりと香りが、乗ってくる。 花の香りに混じって、楠のプワゾンにも負けない、艶やかな香り。 僕の大好きな香り。 優しい毒が。