「死んでも良かった」
「なん……で……」
楠の口から出た言葉とは思えなかった。
何か違う生き物が彼女をのっとって、彼女にそう言わせてる、そんな風に感じた。
「どうして…そんなこと言うんだ。彼女は妹だろ?」
情けないほど、弱々しい言葉だった。
楠はちょっと俯くと、すぐに顔を上げた。
その顔に先ほどの笑顔を浮かべている。
「目障りだったのよ。消えて欲しかった」
もう、「どうして?」と問うことはできなかった。
何故、どうしてそこまで彼女をここまで憎しみで満たすのだろう。
本当に姉妹のように仲が良かった、と聞いた。
雅も、楠を姉のように慕っていた。
「勘違いしないで。心の底から死んで欲しいと願ってたわけじゃないわ。
ただちょっとお兄ちゃんの視界から消えて欲しかっただけなの」



