TENDRE POISON ~優しい毒~





ダッテアタシがタキツケタンダモノ






「なん……で……」




僕は目を見開いた。


強い風が吹いて、目の前を鮮やかな赤い薔薇の花びらが舞う。


僕にはそれがまるで血の色に見えた。





「全てはあたしが書いたシナリオ通り。あたしが最後に先生の名前を囁いたのは、雅が先生に復讐をするってわかってたから」





楠はすっと僕から離れると、唇にうっすら笑みを浮かべた。


あの独特な香りがほんのちょっと遠ざかった。





でも…楠ってこんな笑い方をする子だっけ。



こんな……ぞっとする程美しい笑い方を、する子だったっけ…





僕は目を開いて、ただ楠を凝視することしかできなかった。


開いた目が乾いて痛いぐらいだ。


「……どうして…そんなこと……」


やっと出た言葉は掠れて、風にさらわれそうだった。