TENDRE POISON ~優しい毒~


始業式から一週間が過ぎた。


その日は朝から雪だった。


神代のマンションから見渡す道路や歩道に白い綿のような雪が積もってる。


「ゆず、見て~。ほら、雪だよ♪」


ゆずを抱っこして持ち上げると、ゆずは嬉しそうにキャンキャン吠えた。


「おはよ。早いね」


寝室から寝巻き姿の神代が顔を出して、制服に着替え終わったあたしを見た。


「おはよ。今日はちょっと早く出るね」


あたしは神代に軽くキスをすると、制服のスカートを翻した。


「行ってらっしゃい。滑って転ばないようにね」


神代が心配そうに、あたしを見る。


「先生、今日は“滑る”とか禁句だから」


あたしが指を立てて軽く睨むと、神代は「あ、そうか」と言う風に慌てて口元を隠した。





そ。今日はセンター試験。


明良兄の大学受験の日だ。