偽りの……愛。 「せんせい……」 鬼頭が僕を呼ぶ。 あるときは笑顔で、あるときは悲しい顔で。 泣いてるときもあった。 そう言えば鬼頭は一度も僕のことを名前で呼んでくれなかったな。 「先生、あたし今すごく幸せだよ」 でも、あの言葉を嘘だと思いたくない。 あの言葉が嘘じゃなければ、彼女は今きっと苦しんでる。 愛する者の命を奪おうとしている。 それがどれだけ罪深くて、悲しいことなのか。 僕には計り知れないけれど、その苦しみを救ってやれるのは僕しかいない。 僕しか。