「はい、どぅぞ」
千夏さんは用意してくれたホットココアのマグカップをテーブルの上に置いた。
マグカップから湯気が立ってる。
「……すみません」あたしはマグカップで手のひらを暖めるように、両手で包んだ。
保健医はソファに座って、憎らしいほど長い脚を組んで腕を組んだ。
「で、何があった?」
「……」
あたしは無言で俯いてカップをぐっと握った。
温かい湯気のせいかな、また涙が出てくる。
「ちょっと誠人!もう少し優しい言い方できないの?」と千夏さん。
優しい人だ。ふんわりした雰囲気がちょっと乃亜姉に似ている。
保健医はため息を吐いた。
「俺が知ってる限りの水月は、女に酷いこと言ったりしたりして、泣かすような男じゃないよ」
「……知ってる」
指の先がじんわりとココアの熱気で温まってくる。
その温度が、ちょっと神代のぬくもりに似ていた。
あたしはマグカップをテーブルに置くと、体育座りをして膝に顔を埋めた。
「まぁ、言いたかないんなら、聞かないけど」
保健医がソファから降りて、あたしの横に来た。正確にはその気配を感じたと言っていいだろう。
保健医の大きな手が伸びてきて、思いのほかあたしの頭を優しく撫でる。
「お前、よっぽど水月のこと
好きなんだな」



