TENDRE POISON ~優しい毒~


それから10分も経たない内に一台のシルバーのヴェルファイヤが狭い路地にキッと止まった。


中から保健医が降りてきた。


白いシャツに程よく色落ちしたジーンズ姿。


少し長めの髪はほんの少し湿っているようだった。


風呂あがりなのだろうか。


爽やかな柑橘系の香りがした。


「ったく、何やってんだよ。お前は。水月と喧嘩でもしたのか?」


保健医は腕を組んでうずくまってるあたしを見下ろした。と思う。


あたしが顔を上げると、保健医はびっくりしたように目を見開いた。





「深刻そうだな。とりあえず乗れよ。水月の部屋出てきちまったんだろ?」


あたしは首を横に振った。


「神代……先生のところなんて帰らない」


「そんなこたぁわかってるよ。とりあえず家来い。そのままだと風邪引いちまう」


「先生の……家?」


「他にどこがある?お前一人を実家に帰すわけにゃいかんだろ」


このときの保健医は憎らしいほど頼りがいがあって、あたしは素直に頷いた。