TENDRE POISON ~優しい毒~


風呂から上がったままのスウェット姿で、財布を持ってきていない。


ケータイだけが上着のポケットに入っていた。


神代は逃げ出したあたしの背中に向かって


「鬼頭!」と大声をあげていたっけ。


よく覚えてないや。





さすがに12月の寒空の下だと、スウェット一枚は寒すぎる。


後から後から溢れてくる涙も風にあたってひんやりと冷たい。


それに冷たい風に当たって傷がずきずきと痛みだした。



あたしは人けのいない路地裏で膝を抱えて座り込んだ。




何で……?


何で、こんなにも悲しいのだろう。


何でこんなにも心が痛いのだろう。


この刺すような痛みは、階段の額縁で怪我したときよりもずっと……ずっと、


痛いよ。





何で―――