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神代はあの誰だか分かんない相手から電話があったあと、目に見えて元気がなくなった。


もともとぼぅっとしてる男だったけど、いつもにも増して上の空だし、食欲があまりない。


あまり眠れていないようで、朝までリビングから灯りが洩れているのが途切れることはなかった。


「ねぇ、明良兄。男が悩むときってどんなとき?」


あたしは病院で別れた後の夜明良兄に電話をかけた。


神代はシャワーを浴びている最中だ。


連絡は極力避けていたけど、どうしても気になったからだ。


『そりゃ様々だろ。まぁ俺だったら女のこととか…』


「明良兄でも女絡みで悩むんだ」


あたしはちょっと笑った。


『あのなぁ、こう見えても結構考えるんだ』


「そ。明良兄、今付き合ってる彼女いるの?」


『…今は、いない』


明良兄はちょっと含みのある返事を返した。


「珍しい。明良兄でも途切れることがあるんだ」


『あのなぁ。俺をタラシみたいに言うなよ』


明良兄は電話の向こうでちょっとむくれてる。


『って言うか、ここ一年ほど彼女作ってない。乃亜があんな風になっちまって、とてもじゃないけど、そんな気になれなかったんだ』



あたしはちょっと目を伏せた。


そう。そう……だよね。



明良兄も、やっぱり血が繋がっていないとは言え妹があんな風になっちゃったら、考えるところはあるよね。