ガチャ、ン……
音楽室の中は神藤と私の二人だけ
静かな空気をきったのは神藤のこの言葉だった
「……綾、こっちにおいで?」
それは優しいけども強く私の神経を狂わせ、逃げることを決して許さない甘い言葉の呪縛
「し、んどぅ……」
「やっぱり……泣きたいなら泣きたいって素直に言えばいいのに…」
「ないてなんか、ない…」
「じゃぁ、その涙はどう言い訳する気?」
「こ、れは…」
「はぁ…そんなに負けたのが悔しい?」
「違う…確かに悔しいけど……」
「じゃぁ僕が言った言葉?」
私は首を横に振った
「じゃぁ僕の行動が綾に不愉快な思いをさせたのか??」
「……するんでしょ…?」
「え?」
「留学! …するんでしょ…?」
「え……どうして」

