「おい、クーラーもっと下げろよな!」
「全く、俺様をあがらせるんならそれ相当のおもてなしをしてほしいね。」
なぜ話し合い場所を自分の家なんかにしたのか、今になってアラシはなんとも言えない後悔の波に襲われていた。両親が共働きで留守にしているから、きっとここなら誰もいないし気楽に話し合えるのではないかと甘い考えで二人を誘った。だが、大失敗、彼等ときたら、予想以上にありがたいお言葉をはいてくれてしまうのだ。アラシはたった五分で、一抹の不安を覚えた。
「でさ、何すりゃいいんだよ。」
と。ヒカル。カーペットに寝転び、人様の家のポテトチップスを幸せそうに食べ散らかしながらそう発言した。
「お笑いとかはどう?みんな楽しむと思うし、ネタなら俺自信あるよ。」
アラシは、空になったコップに麦茶を継ぎ足しながら明るくそう言った。
「はあ?あんた、俺をなんだと思ってるわけさ。天下のスバル様だぜ。そんな庶民的な芸が出来るかってんだ。」
「俺は庶民なんですけどね。」
ぼそりとつぶやくように言う。