「なあに言ってんだよ、あんたら。この曲はみんなで歌おう!」
二人の目がパチッと見開かれた。そしてその視線は真っ直ぐにスバルに向けられている。アラシにいたっては、「ハテナ」を浮かべていそうな表情だった。
「だってさ、これは三人の曲だろう。俺たちみんなで作ったんだからさ。」
スバルは、スタジオいっぱいに言い放った。その声は、やがて自分の所へこだまとなって帰ってくる。
「俺は何にもしてないけど。」
ぼそりとつぶやいたアラシに、優しくヒカルが言った。
「なことねえぜ。お前がいなきゃ、話纏まんなかっただろ。それに、いい引き立て役だぜ。」
「う、うるさいな、ヒカル! どうせ俺は凡人ですからー。」
気づけばこうやって笑いながら憎まれ口もたたき合えるようになっていた。
「でも、やったー。俺、実は歌いたかったんだよな。」
ヒカルは、ノリノリでさっそく体を動かしている。
 「じゃあ決まり。そうとなれば、今から歌の特訓だ。あんたら、音外したら許さないからな。」
スバルは、キーボードの前に立ち、「ソ」の音を弾いた。
「黙れ、楽しければいいんだよ。」
「俺たちには絶対音感ないしね。」
「グチグチ言わない! じゃあいくよ。」