アラシのドラム捌きも大分胸をはれるようなものになり、ヒカルとも近頃はケンカの回数が減っていた。そして曲も、だんだんと三人の音が重なるのが分るものになり、少しずつ一体感を感じられるようにもなってきた。
 「さて、休憩にしようか。ヒカル、最後は、普通にGコードで終わったほうがまとまりがあるんじゃないか。」
熱気のたちこめるスタジオで、彼等は揃ってフーと息をついた。
「お、そうか。ならやってみっかな。」
「後はあんたに任せるけどね。それとアラシ、もっと楽に叩きなよ。こうやって、手首の力を抜いてさ。」
スバルは胸の前で、ブラブラと両手を振って見せた。麦茶を飲みながらアラシはなるほどというようにうなずいた。
「ところでよ、スバル。」
額の汗を拭いながら、ヒカルが切り出す。
「作詞のほうは順調なのか?そろそろ曲と合わせてえし、誰がボーカルかってことも決めなくちゃいけないしさ。」
「確かに。早くスバル様の詞、見てみたいな。」
アラシもそれを煽る。すると、スバルは急に自信なさげにうつむいたのだ。今まで決して見せなかった苦しそうな顔をして。
「それが…」
「ぜんぜんなのか?」
彼の気を知らずか、ヒカルは担当直入に問いかけた。