練習曲での音合わせも何日か続き、なんとなくそれなりの演奏に成ってきた
。と、いうよりは、アラシの特訓をしたと言ったほうが正確だ。後は、ヒカルとスバルの微調整と、それから二人のケンカで時が過ぎた。二人とも、変なところでプライドが高く、一度やり出したらアラシに止めることなど出来ない。口げんかでは、達者な日本語を使っての、スバルの優勢であり、手が出ると、運動神経の良いヒカルの方に風が変わる。
 「曲を作ってきたぜ。いいか、俺が今から弾くからちゃんと聞いてろよ。」
スタジオの中に、ヒカルの声が飛んだ。話し合いも何も無く、曲はヒカルが、詞はスバルが担当することになった。自分も何かすると主張したアラシは、あっけなく許可された。
「あんたの場合、とりあえずちゃんと叩いててくれればいいから。」
と、スバルにはっきり言われ、返す言葉もなかったということだ。
ヒカルは、ピックを持ち、最初の一音を力いっぱいかき鳴らした。Gコードだ。
ジャジャーンと、空を裂くような音が生まれ、そこからロック調の曲が始まった。
メロディラインは、細かく早く、伴奏は鋭く力強い。まるでパンクだ。ヒカルは、自分の世界にひたっている。