じかんの代償

『気付いたら、目の前に黒いネクタイに黒いスーツを着た男が立ってた……
《飯束和喜様があなたを必要としておられます。
おもどり下さい。》
って言われたと思ったら、病院の手術室の前に立ってた……
生き返ったんだ…俺……
状況が理解出来なくて……和喜がなんか知ってんのかと思って電話した……
どうなってんだ?
俺はなんで生き返ったんだ?』
こう、兄に問い掛けられた。
私は、
「夢に黒いネクタイに黒いスーツの男が出て来て、男に《もうこの世にはいないから会えないけれど会いたい人はいますか?》と言われた。
兄と答えると私の時間の一部と引き換えに、兄を生き返らせてくれた。」
と答えた……
恐る恐る兄が尋ねた……
『俺に……何年くれたんだ?』
私は、
「52年。」
とだけ答えた。
すぐに
『和喜!!お前はあと何年生きれんだ?』
沈黙が続いた……
体が震えた……
「………1年……」
小声で呟く事しか出来なかった……
『………なんでだ…?なんでだよ………』
兄は、泣き出した……


なんでか……私が聞きたかった。