じかんの代償

そんな生活を続けて2週間程過ぎたある夜、夢を見た。


私は、見たことのない場所にいた。
屋外か屋内かは分からないが、真っ黒で何もない場所だった。
5メートル程先に、顔はぼやけて見えないが、全身黒スーツの男が立っていた。


男が話しだした。
《あなたには、もうこの世にはいないから会えないけれど会いたい人はいますか?》
私は、死んだ兄に会いたいと答えた。
すると男はこう言った。
《その方を生き返らせられるなら、生き返らせたいですか?》
はい!!とためらいなく答えた。
《生き返らせることは簡単です……》
光が見えた瞬間だった。
しかし、直後彼の発言に混乱した。
《…あなたの時間、つまりあなたの寿命の一部をその方にあげればいいのです。》
正直、???となった。
まだ、やり残した事はたくさんある。
そんな中で一部であっても、寿命をあげる…考えれば考える程迷いが出た。
男は話を続けた。
《あなたの寿命はあと“53年”です。どうされますか?》
……迷う暇もなく、意志に反して私の口が勝手に動いた。
「“52年”彼に渡してください」と……
《かしこまりました。》
と言って彼は消えた……

私は恐怖に震えた……
1年後……私は死んでしまう…