『コンコン』 ノックの音が聞こえた。 「失礼するよ、佐藤くん」 部長の声! エイトはばっとあたしから身をはがし、あたしを抱き起した。 あたしの髪の毛を手でぱぱぱっと整え、「どうぞ」と落ち着いた顔、落ち着いた笑顔で言う。 何もなかったように。 少し乱れた服も、あたしのズレた眼鏡も、髪も元通り。 そして、この空間の雰囲気も。 え。何。 この人、マジシャン?