「そっか…。ごめんね、勘違いして」


様子を伺おうと横目でチラッと見た先には、笑顔のカノンがいた。
下手くそ過ぎる笑顔。目にはうっすら涙を浮かべていた。


心が痛みながらも優しさと冷静さの欠けた僕にはそんな彼女にどう対応していいか分からなかった。


「大体さ、何で占いなんかやんなきゃいけないの?」

「え?」

「そもそも遊園地なんて来たくなかったし…」

「……。ごめんね」

「休めば良かった〜」


これがドラマの1シーンで、僕が視聴者ならば間違いなく思うだろう。
主人公最低だと。

だが自分を抑えることが出来ない。
感情をコントロールすることが出来ない。
僕はカノンの泣き顔に怯むことなく続けた。


「カノンもさ、そんなに占ってもらいたいなら最初からこんなセコい真似しなくたって2人で行けば良かったんじゃないの?巻き込まれていい迷惑だよ…」

「えっ?」


カノンの表情が悲しみから一変、驚きに変わった。そんなカノンにつられて僕も似たような顔をした。


「2人って?」

「自分が一番よく分かってるだろ?」


ユーヘイを想像しながらも名前を出そうとはしなかった。彼女の口からハッキリ認められることが怖かったのだ。

しかし彼女はピンと来ないのか、それとも誤魔化そうとしてるのか、不思議そうな顔をして僕に迫ってくる。


「どういう意味?2人って誰のこと?」

「………」

「ジュン!?そこまで言ったならハッキリ言ってよ!!」


すると、


〜次の方、中へお入り下さい〜


と、待合室にアナウンスが響いた。

僕は何も言わず占い師の部屋に通じる大きな扉を開けた。