「タクさん…」


「夢なんてなぁ。全部自分次第なんだよ。見つけるのも実現させようとするのも諦めるのもな…」


タクさんが夢について語り出すとカンちゃんが席を移動し、タクさんの隣に着いた。

さすがカンちゃん。年上男に目がない…。


タクさんがいつになく真面目に語っている最中、さっきまでカンちゃんが座っていた席にカノンが腰掛けた。


「大丈夫?元気ない?」


僕の様子を伺ってくるカノン。


「大丈夫だよ」

「ウソ。朝から元気なかったじゃん?」

「えっ!?」

「私が分からないとでも思う?」


カノンは自信あり気にニコッと笑った。



どうしてカノンには分かってしまうのだろう。

逆に僕はカノンのことどこまで分かっているのだろう。

カノンの何を見ているのだろう。

音大に行くことすら知らなかったのに…。