男は虹を架ける命を受けた者のだった。

女が雨を降らし終え、空に光が満ちるのを合図に天に向かってその大きな手を広げる。
塗りつけられた汚れを拭うように力強く動かすと、そこには七色の光の束が現れる。

人はそれに見入る。時には歓声を上げ、時にはじっと押し黙ったまま。
何かを祈る者もいる。

それぞれではあるが、その瞳には負の感情が浮かぶことはない。
歓迎の心を持って迎え入れられるそれは、万人の希望や福音の象徴のようだ。

男の傍にはいつも女がいた。
濡れた髪から雫を滴らせながら少し顔を空に向けて、ただその網膜に静かに虹を映す。

雨を降らす命を受けたその女が虹を見上げる横顔を見るのが、男は好きだった。