「あなたの愛はどこに向いているの」
黙り込む私の前で、全ての感情が入り混じる。
そしてぷっくりと肥大化し、正面から私を見据えて指を差した。
「愛する事と愛してあげる事と、愛されたいと思う事」
幾つもの指があちらこちらを差す。
「ベクトルはどっちに?」
そうしてうにゃうにゃと伸び、感情は壁のように私を取り囲む。幾つもの口が私に向けられそれぞれに動く。
「好きなの?嫌いなの?愛なの?固執なの?」
「喜びなの?歓びなの?悦びなの?」
「自分なの?相手なの?奉仕なの?支配なの?」
「独占欲なの?物欲なの?色欲なの?自尊欲なの?」
「幸せなの?不幸なの?幸せにしたいの?不幸にしたいの?」
「幸せになりたいの?不幸になりたいの?傍にいたいの?傍にいて欲しいの?」
「壊したいの?作りたいの?失くしたいの?手に入れたいの?」
うにゃうにゃうにゃと全ての問いかけが私に鎖のように絡み、重くのしかかり、縛り。
そして、やがて。
もう気がすんだのか、感情はその体をまた小さい塊に戻すと、呆けたように開いた私の口の中にポンと飛び込んできた。
吐き気はおさまっていた。
私はその場に座り込む。足元には包丁が落ちている。
切れ味の良さそうな包丁の刃を何も考えずに見つめ、ようやく私はのろのろと包丁を拾い上げた。
包丁はご飯を作るものだ。
不倫相手を刺すものではない。
ましてや私を殺す道具ではない。
台所に包丁をしまい、冷たい水を飲んで。
コップに反射する光を見て、私は自分の感情に向き合う覚悟を決めた。
強い所も弱い所も、汚い所も、綺麗なところも。
全てはエゴだと認めて。
《おしまい》
黙り込む私の前で、全ての感情が入り混じる。
そしてぷっくりと肥大化し、正面から私を見据えて指を差した。
「愛する事と愛してあげる事と、愛されたいと思う事」
幾つもの指があちらこちらを差す。
「ベクトルはどっちに?」
そうしてうにゃうにゃと伸び、感情は壁のように私を取り囲む。幾つもの口が私に向けられそれぞれに動く。
「好きなの?嫌いなの?愛なの?固執なの?」
「喜びなの?歓びなの?悦びなの?」
「自分なの?相手なの?奉仕なの?支配なの?」
「独占欲なの?物欲なの?色欲なの?自尊欲なの?」
「幸せなの?不幸なの?幸せにしたいの?不幸にしたいの?」
「幸せになりたいの?不幸になりたいの?傍にいたいの?傍にいて欲しいの?」
「壊したいの?作りたいの?失くしたいの?手に入れたいの?」
うにゃうにゃうにゃと全ての問いかけが私に鎖のように絡み、重くのしかかり、縛り。
そして、やがて。
もう気がすんだのか、感情はその体をまた小さい塊に戻すと、呆けたように開いた私の口の中にポンと飛び込んできた。
吐き気はおさまっていた。
私はその場に座り込む。足元には包丁が落ちている。
切れ味の良さそうな包丁の刃を何も考えずに見つめ、ようやく私はのろのろと包丁を拾い上げた。
包丁はご飯を作るものだ。
不倫相手を刺すものではない。
ましてや私を殺す道具ではない。
台所に包丁をしまい、冷たい水を飲んで。
コップに反射する光を見て、私は自分の感情に向き合う覚悟を決めた。
強い所も弱い所も、汚い所も、綺麗なところも。
全てはエゴだと認めて。
《おしまい》


