「悲しみは愛を覆い」
『悲しみ』は『愛』に覆いかぶさって『愛』を悲しみ色にして、

「憎しみは全部踏みにじるよ」
『憎しみ』がそれを踏んだ。
ボロボロになった『愛』は何とか起き上がろうとバタバタ手足を動かす。

「惨めにもなるよ」
手足を動かしながら『愛』は色を変える。

「喜びはどうしたのよ」
私はようやく口を開いた。ボロボロのそれを見ていられなくなって。

「喜びもまた色々なの」
ボロボロの愛には目もくれず、喜びはいくつもの喜びに分かれた。
「あなたが好きな喜びはどれ?こっち?それともこっち?」

「これが救える喜びはどれ?」
私はジタバタしている感情を指差した。
「これを救えるのは喜びじゃないわ。喜びにできる事はこれに同情して涙を流して悦に浸るか」
そう言うと『喜び』は『悦』になり
「自分の方がマシ、って見下して笑うかよね」
そう言った『喜び』は『蔑み』に姿を変える。

私はまた何も言えなくなった。
何がこれを救えるのかも分からなかった。