『感情』

このところ続く体調不良がいっこうに治らない。
猛烈な吐き気を感じて腑臓をえぐるように口から出てきたのは私の感情だった。

おにぎりにひょろりとした手足をつけたようなそれは
「イライラしちゃってまったく。角が立っちゃうよ」
「そうそう」
ぽん、と二つに分裂し、
「三角どころか四角になっちゃうよ」
分かれた片方が身体を四角くして言った。

「感じる事に蓋すると、情が上手く動かない」
「動くところが狭くなると、私、上手く動けない」

そう言って動きまわる感情に、ぎょっとしたまま何も言えないでいると、三角と四角は私を見てぴょんぴょん跳ねながら
「何をそんなに思いつめるの?」
「何にそんなに思いつめられているの?」
と言った。

「好きの反対は嫌いだよ」
三角はそう言うと『好き』になり
「好きの反対は嫌いだよ」
四角は『嫌い』になった。

「でも嫌いはずっと行くと好きになるんだ」

そういって嫌いは好きに飛びつき、二つは『好き』というひとつの感情になる。

『好き』は止まる事なく動き回り、我ながら活発な感情だなぁと思った。
こんなに動くのだもの、長く抑えつけていたら、それは体調不良も起こるだろう。

「好きは愛のひとつだよ」
「そうそう。愛は何でも産むんだ」
『好き』はひっくり返って『愛』になる。そして
「喜びに、悲しみに、憎しみに…何かたくさんの他の物を産むよ」
と言いながら分裂してそれらを私の前に並べる。