昼食が終わると、香奈枝は急に立ち上がり、どこかに行ってしまった。
拓馬も奥に行ってしまったので、私はこっそり部屋を物色することにした。
天井から吊り下げられた色とりどりの布たち。
紫のテーブルクロスが掛けられたテーブルの上には、水晶球が乗っている。
いくら覗いたって何も見えないのだけど、きっと香奈枝には見えているのだろう。

「……占い、か。」

私は小さく呟いた。
今まで占いなんて、一度も信じたことが無かった。
TVの星座占いを見てきゃあきゃあ騒いでる人たちを見ると、
『馬鹿じゃないの』と思ってしまうたちだし、非科学的だと思っていた。
でも今は、信じざるを得ない。
だって、現に私の全てを知っている占い師が居るんだから。
私は水晶玉を再び覗きこんだ。
水晶玉の中には気泡と呼ばれる泡が浮いていて、とても神秘的。
占い師の真似をして、覗いていたら何か水晶玉の中に映し出されるのかと思って、
私はじーっと水晶玉を見ていた。
占いのレッスンって、何やるんだろう?
私にはさっぱろ分からない。
何となく香奈枝のペースに押し切られてOKしてしまったけど、
本当に私はこんな怪しい所に居ていいんだろうか。

「お袋の事、怪しいって思ってるだろ。」

急に後ろから声を掛けられて、私は飛び跳ねた。
図星だったので、びっくりしてしまったのだ。

「確かに、アイツ、怪しいよな。」

そう言って笑う拓馬。
だけど、その笑顔はどこか寂しげだった。
もしかしたら親の事を、親戚や友達にとやかく言われていたのかも知れない。

「確かにお袋のマイペースっぷりには、時々俺も付いていけないけどさ。
それなりに、いい奴だから。」

拓馬は腕を組んだまま、こっちに近づいてきた。
その瞳は香奈枝譲りの、何もかもを見透かしてしまう瞳だった。