「いるよね、そういう、陽の当たる場所にいる女子!」

池上が言った。
その言葉は多くを説明しなくとも、私の歩んできた人生を見透かした。
太宰治の言葉を借りれば、私は若者の生活というものが全く分からない。
小学校時代は、クラスに1人も友達がいなく、1人で漫画ばかり描いて過ごしていた。
体育の時、先生が「2人組を作れ」と言った時程、困る瞬間はなかった。
割らしは最後に必ず余る。
仕方なく先生が2人組を組んでくれて、体操のお手本としてみんなの前へ出て見せ物になるのは私である。
中学校では、男子から集団無視のいじめを受ける。
授業中、私が指されると、私の声を聴くと耳が腐ると言って、男子全員が耳を塞いだ。
私は日陰で育った女子である。
幸い私は歌手になっていじめた奴らを見返してやるという反骨精神を持っていたので、それは17歳の時に実現した。
それでも、好む小説や漫画は、岡崎京子、内田春菊、太宰治、芥川龍之介と、暗かった。
「そういうの読んでると本当にそうなっちゃうんだよ〜。」
池上の言葉は少し怖かった。
今日も自分撮りをした。
私の内なる恐怖は自分撮りに隠されている。
本当に自信があったら自分撮りなどするだろうか。
いじめや憎しみ病気コンプレックス全て取り込んで、今に人にバレないかと怯えている。
撮影には光が要る。
しかし偽りの光にすぎない。
私は所詮日陰で育った女子である。