智咲の目は虚ろで、生気がない。

かすかに智咲の口が動く。

「・・・ちない。落ちない。
落ちないよ!!
血が!
私の視界から消えてくれない!
どうがんばっても、
私の視界は真っ赤で、
どんなに川で顔や体に
ついた血を落とそうとしても!
視界からは血が消えてくれない!
わ、たしのせいで!
私のせいでっ!
気絶するだけでよかった人が、
死んだんだっっ!
うわ。
うわぁぁぁぁぁぁぁんっ!!」

そういって智咲は泣き始める。
そんな智咲を沖田は抱きしめる。

「そ、じさん・・?」

智咲は驚きのあまり泣くのをやめる。

(総司さんの匂いがする。なんか落ち着く。)

「泣きたい時は泣けばいいんです。
辛い時は仲間を頼ればいいんです。
あの力士は智咲さんのせいで
死んだのではありません。
むしろ力士の命を救いました。
他の智咲さんが気絶させた力士は、
智咲さんがいなければ気絶ぐらいで
すまなかったかもしれませんよ。
それだけで智咲さんは立派です。」

ぽん、ぽんと智咲の頭をやさしく叩く。

「う。うぇぇ。
うわぁぁぁぁぁぁぁっ!
総司さん!総司さん!!!
ごめ、ごめんなさっ!!
うぇぇぇぇぇっ!」

そういって智咲は沖田を抱きしめ、
また泣き始める。

「なんで謝るんですか。」

沖田はそう微笑むと、
智咲が泣き止むまでずっと背中を擦っていた。

・・・・・・・

「う・・・っ
ひ・・っく。
あ、りがと、ございます。」

「いえいえ。
困ったときはお互い様です。」

沖田はにこっと微笑む。