「ああ。ひとつだけじゃないかもだけど、教えてあげる。『鬼の覚醒』の時の記憶がない。それは正解。なんで夢に出てくるかは、普段使っている記憶の引き出しとは違う引き出しに『鬼の覚醒』の時の記憶が入っているんだ。」
私の言葉を遮って栄太郎は続ける。
「つまり、簡単にいうと普段使っている記憶の引き出しとは別の記憶の引き出しに、『鬼』の時の記憶が入るんだ。別の引き出しを見たいときは、睡眠中、または瞳を閉じて、外の世界を瞳に映らなくすればいい、ってこと。」
わかった?と栄太郎はいったん話し終えると私に聞く。
「・・・うん。あ!それとさ、今私右目ないじゃん?それって死んだら元に戻るの?」
「ああ。それは、自分の思っていることで変わってくるよ。鬼って不思議でね。分からないことがまだまだたくさんあるんだ。
人間と同じように、またはそれ以上に秘密が隠れている。
自分の知らない可能性がある。限界は自分では分からない。
思うだけで、変わることもある。
たとえば智咲の右目が、死んだら元に戻るか・・・。
それは思い込み次第。また右目がほしいと思えば死ぬときに右目も一緒に復活して。右目はもういらないと思えば死んでも復活しても元には戻らない。
・・・ね?面白いでしょ?」
「・・・??一応分かった気がする。」
「あはは。不思議でしょ?僕だって不老不死といわれてたのに、もう復活しなくていいや、そう思っただけで死ぬんだよ?思うだけで、死ねる。驚きでしょ?」
「・・・・え?そしたらもう死んでいいやって思ったの?!」
「うん。もう俺は死んでもいい。そう思ったから死んだの。」
にこりと生前のように爽やかに笑う。私も死のうと思ったら死ねるのかな・・。
「・・・でも。半端に死にたいと思っても死ねないよ。それだけは言っておく。んじゃあ自慢の妹も元気が出てきたようだし・・・俺はもう行くわ。また、夢で!」