そのころ美羅は・・・

――どうやって翔は逃げたのだろう――

それで、頭がいっぱいだった。

 昨日は他の事を考えてて忘れていたけど、あの怪我で逃げられるはずがない。
逃げられたとしても、通行人に不審な目で見られるか、通報される。
あの時いた味方は意識不明にしたはずだから、誰か呼んだって事?
 それとも 内通者がいるのか?

今思えばあの研究だって、莫大な資産がなければ出来ない。
 提供者がいるのか? 資産家が後ろについて…?

会社に顔出しついでに調べるか。 こんな事は二度と遭っちゃいけないんだ。

 今度こそ、誰かが死ぬかもしれないのだから。
それに―――

「美羅。何考えてんの?」
「うわぁっ!」

いきなりののが声をかけてきた為、驚いてしまった。

「うわって…失礼しちゃう。崎坂君がたそがれてるよ」
「え、隼人? ……そうだ隼人、今日会社行くから連絡しといて!!」

そう言った私に、隼人はため息をついてこちらを見た。

「俺の事、なんとも思ってないの?」

その発言とともに隼人の整った顔が近づいてきた。

「なんともって……は、隼人は大事な人だよ? 大切だと…」

思ってる。 そう言おうとしたけど、隼人の寂しそうな表情に阻まれてしまった。
 その顔で本当? と言うように私の顔を覗き込んでくる。

 近いっ 近いって!! 
かぁぁぁっと顔が熱くなるのを感じた。

「まあいいや。電話してくるよ」

そう言って教室から出て行った。

「ホッ」

安心が声にでてしまった。

「可哀想に……」

そんなのののつぶやきが聞こえた。