春姫が消えた事を知った国民は王家に刃を向けた。

王家はその刃を回避するために、すべての理由。いや、言い訳を言う。

―――――春姫は王家の子ではなく“禁忌の子”だと

うろたえながら、勝ちを確信したような笑みを浮かべながらそう王が言った。

 そんな国王に国民は絶句。 内容もそうだが、その態度に。
まるで春姫は駒だと、花姫の代わりだったとそういう態度に。

“そんな事”国民には関係なかった。優しくしてくれた姫を、自分達を大切にしてくれた姫を、“禁忌”という言葉で片付けたくなかった。
 
逆に王家に対する反抗心は高まった。

王はまた言う。“この時の為”に利用した王子の名を。

 もちろん刃は彼にも向かった。 しかしそれは発展しなかった。

・・・・・・彼の表情を見て。

 すべての出来事を悔いているかのような、この現実を否定“したい”。そういう感じだった。
 現に彼は話そうともしなかった。非難の言葉を受けても、酷い事されても、彼の表情は変わらなかった。いや、変えれなかったのかもしれない。失ったものが大きすぎて。


 戦争が始まろうとした。ヒートアップした国民、逃げ腰の王。結果は一目瞭然だったがそれは始まらなかった。

 止められたのだ。無気力だったあの王子に。

理由はわかっていた。誰もが皆。
 でもトメラレナイ。この衝動を。

それを止める条件が、“10年たったら俺が見つけられる。それまで耐えてくれ。もし出来なかったら、その時は任せる”

 それから10年。今に至る。